ある日、ネコは震える声でクモを呼びつけると、ビクビクしながらいいました。
「なんか、庭で黒い影がウロウロしてないすか?」
「どれどれ …」と、クモは窓わくから外にさっそく糸をたれてみましたが、誰もいません。
「どうなさったんです? 最近ずいぶんビビッてますのね」
「だって、昨日だったかな。オイラ見たんすよ、台所の窓を人が横切るのを」
「そんなの、あの魔女にきまってますわよ。あの人、出かけたと思ったら帰ってきたり、庭から家の中をのぞいたり、本当何やってんだか、いつもせわしない。そのくせ、ホーキに乗って消えちゃうと、やたら長いですものね」
「それもそうっすね。一体どこいってんすかね?」
「それは遠いとこですわよ。死ぬほど遠い。だってね、あたし、知ってますの。そこでは誰もが英語を話しますのよ」
「へえ」と、ネコはクモを見上げました。
ネコにとって、クモはすでに称賛と尊敬の対象になっていました。ところが、その日のクモはそれを超えた、とてつもなく遠いところへネコを連れ込もうとしているかのように見えます。
「わたくし、英語を話すところにいましたの。民家の軒先、駅の天井裏、どこで巣をはっても、そこでは英語っきり聞こえませんでしたわ。それにある時なんて、牢獄にもおりましたのよ。四角い換気用の穴から入り込んで、巣をつくるとじっとしてました」
「はあ、でも、怖くなかったんすか。牢獄って悪い人が入れられるとこっすよね?」
「まあね。そりゃ、いろんな罪人が収容されてきましたわ。わたしのいた独房では、みなさんひとりぼっちでしたから、ちょっと可哀そうでした。でもね、ひとりになると、何をするかおわかり?」
「?」
「それはね、ひとり言ですわよ。どんな人でも、しゃべりにしゃべくるんですの。それを聞いて、わたくし言葉を覚えたんですの」
「へえ、罪人のひとり言で英語を? でも、アンタの発音ってとび抜けていいっすよ。まるで歌でも聞いてるみたいだ」
ネコにいわれて、クモはドーパミンがあふれ出したのか、体をチリッと震わせました。
「ふふふ。あたくし英語の構造は、よく心得ておりますのよ。牢獄の中にやたら文法に強いのがいて、わたしにいろんなことを教えてくださいましたの。たとえば、ほら、わたくしの体って二つの部分からなってますでしょ。でも、英語の文ってのは二つだけじゃなく、三つ、そしてときに四つの部分に分かれるんですって。そして、あたしに足がたくさんついているように、英語も足(副詞)がいろんな体の分かれ目から伸びているんです。変な生き物ですわよね。でも、複雑そうだけど、ただの足ですしね」
ネコはその晩、クモの話を思い出してなかなか寝つけませんでした。
「クモはどれだけ長く、暗く怖いところにいたんだろうか。それに比べて、オイラはちょっとの影でビクついたり、カードの暗記だけでベソまでかいてるだなんて」
ネコはそう思うと、勇気のない自分をつくづく情けなく思うのでした。
🐤ブンポウの話 (上級者向け)
英語の文型は複雑で面倒そうだ。その原因はクモがいうように、足のような副詞(副詞句)の存在があるからだと思う。副詞を取り除くと文型はもっと見えてくる。一方で、文型にとらわれていると速く読めない。最初のうちだけ、ザックリと意識*しながら簡単な文を多読しておこう。
●文型(S主語、V動詞、C補語、O目的語)
◎第一文型(S+V) I/go(to school). ←to schoolは「副詞句」
◎第二文型(S+V+C) I/am/Areopagita.
◎第三文型(S+V+O) I/wash/my face.
◎第四文型(S+V+O+O) My friend/teaches/me/English.
◎第五文型(S+V+O+C) I/call/him/Bernard.
㊟*アレオパギタ氏の文を三つに分ける方法も、厳密には第二だけでなく、第一文型もあったんだよ⇒We are in Pip Castle.
🔑「I/my/me/mine」表なら、主語は「I」目的語は「me」の縦項目があてはまる
●副詞
1)副詞の修飾(動詞、副詞、形容詞、文全体)
例)下線部が副詞
①He is a very tall guy. ←tallは名詞guyを修飾する「形容詞」
②He runs very fast.
③He is a fast runner. ←このfastは名詞runnerを修飾する「形容詞」
④Actually, he is amazing.
㊟形容詞と副詞両方の働きをもつ単語は、fastの他hard/late/early
①「形容詞」tallを修飾するvery
②「動詞」runを修飾するfast
②「副詞」fastを修飾するvery
④ 文全体を修飾するActually.
👉修飾する言葉に向かって、自分で矢印(⤵)をつけてみよう!
2)副詞の位置はさまざま
◎文の最初(例④)や、程度を表す副詞は修飾したい単語の前(例①や②)
◎動詞の(目的語を伴うならその)後に置き、動作の様子を説明(②)
◎「頻度を表す副詞」⇒always/usually/often/sometimes/never
・He never speaks to me. ←一般動詞の前
・She’s always late. ←be動詞の後ろ