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  • タイムカマド(第3章12話)

     ハンフリーの携帯がさっきからブーブー音をたてて震えていました。彼は電源を切ると観客席へと戻っていきました。劇場の中では外に出ようとする観客たちが押し合って、ものすごい混乱が起こっています。

     スピーカーを通して警備員が観客の誘導を始めました。警官の一人が「【A】Your Highness? Did you get injured?」とロイヤルボックスに向かって呼びかけていました。上を見るとピピンが振り返ることもなく、お付きのものに支えられるようにして、ふらついた足取りで退出するところです。付き人の一人が「【B】A bullet hole!」と銃弾が打ち込まれた手すりの角を指さして怒鳴っていました。ヘルメットの警官が数人、二階席へとかけ上っていきます。

     「ひどいありさまだ」とハンフリーが首を横に振りました。ハンフリーは携帯の電源をもう一度つけて、莫大な数のメッセージに目を通しました。

    「犯人は逮捕されたらしい。 幸いにも今のところ死傷者は出ていない …」

     なんとか劇場の外に出ると、立ち入り禁止のテープが至るところにはりめぐらされ、パトカーと白バイが交通規制していました。

    「この辺は、ちょっとやそっとじゃ抜けられないようになってるぞ。送ってくよ、バーニー」

    「いや、いいっす。 自分で帰れますよ(I think I can manage.)」

    「だけど、近道を知ってるんだ(I know a short cut.)」

     ハンフリーがちょうどパトカーから出てきた警官に話しかけると、警官は地面にあったフロアスタンドを動かして、ネコとハンフリーだけ裏道へ通してくれました。ハンフリーは狭い通りを右へ左へネコのペースで歩いてくれます。

    「今日は、いい息抜きになったと思ったけど、せっかくの楽しみが最後にこうなるとはね(It was a good change of pace today. Such a shame that a lovely occasion ended up like this.)。こんな事件ばかり続くと、誰だって信用おけなくなるもんさ。いつもいっしょにいるやつでさえ、案外一番の敵じゃないかって思うようにさえなる。バーニー、キミも気をつけた方がいいよ(Do take care of yourself, Bernie.)」

     ネコは、ハンフリーが半ば危険を覚悟して毎日業務にあたっているのだと思いました。考えたらそれは王族だって同じことなのです。

    「ロイヤルボックスに銃弾の跡があったんすよね(There were some bullet holes in the Royal box.)。これって、ねらわれたのはピピンってことなんすか(Does that mean Pippin was targeted?)」

    「うーん。これから犯人を取り調べればもっとわかるだろうけど」

    「はあ、そうすか。取り調べってのは刑務所でやるんすか(Are interrogations conducted in prison?)」

    「刑務所(Prison?)。刑務所は判決が下ってからだから、まだ留置所だと思うけど(I think the suspect is still in the detention centre. He goes to prison after sentencing.」

    「はあ、ハンフリーは刑務所にはいたことがあるんすか(Did you ever spend time in prison?)」

    「オレが刑務所(Did I spend time in prison?)」とハンフリーは立ち止まると、面白そうに笑いました。

    「いや、いたことはないね(No, I didn’t.)。まあ、仕事がら本当は刑務所の視察もした方がいいんだろうけど、他のことで忙しくて(I know I should visit the prisons but I think it impossible to do so now. I’m busy with other work.」

    「へえ、そうすっか(Are you?)。実はオイラ駅からだけどオッカム刑務所を眺めたことあるんすよ(I actually saw the Tower of Ockham from the station.)。ミリーが教えてくれて、偶然列車であってね(Milly pointed it out for me. We met by accident on a train.¹)。 It’s not as old as Pip Castle, but it’s about twice as large as the castle.」

     携帯がまた鳴り出しました。「失礼(Excuse me.)」とハンフリーは電話に出ると、機関銃のような勢いで英語で話しています。

    「バーナード、悪いけどこれでいかなくちゃ(I’m sorry, but I must go now.)。キミのホテルはそこを左に曲がればまっすぐだから(Turn left and walk along the road to get the hotel.²)」

     ハンフリーは軽く手を上げると、クルリと踵を返して携帯を耳にあてたまま、もと来た道を弾むようにかけていきました。

    ¹ by accident 偶然に

    ² walk along ~ 〜に沿って歩く


    《日本語訳》

    【A】

    「殿下、ケガはないですか?」

    【B】

    「ここに銃弾の跡があるぞ!」


    🐤ブンポウの話 

    【文中の表現】

    A)The prison is not as old as Pitt Castle. その刑務所はピット城ほど古くはない 

    B)It is about twice as large as the castle. それは、その城の約2倍の広さだ 

    ●いろいろな比較級(発展)

    A) not as ~ (as) … 「…ほど~じゃない」

    書き換え⇒Pitt Castle is older than the prison.

    B) twice as ~ as … 「…の2倍の~だ」

    書き換え⇒It’s about twice the size of Pitt Castle.

    👉この手の複雑な構文は、例文を暗記するのが一番の近道

  • タイムカマド(第3章11話)

     休憩時間になったので、ハンフリーはネコを劇場のバーに連れていきました。自分は飲み物をオーダーして、ネコといっしょにテーブル席に腰かけました。バーは劇場の入口付近にあるためか、人と王族が通路をひっきりなしに通り過ぎて、話し声でガヤガヤしています。

     「【A】Oh, Mr Areopagita. I didn’t know you were here.」とふいに後ろから声がかかって、ハンフリーの横に年配の女性があらわれました。くるぶしまであるシルバーの長いガウンを着て白い手袋をしています。

    「【B】Glad to see you, Mrs Clemens.」とハンフリーが立ち上がって答えると、女性はとなりにいたネコに気づいたからか、ネコの方に膝を折ってあいさつしてくれました。それから、ゆっくりとネコにラテン語で話しかけます。

    「すばらしいモヨオシ。キョネンよりいいです。デンカは何一番よかったですか?」

    「そうっすねえ。 最初の出だしからぶっ飛んだんす。 アート界隈ではめっちゃギュンっすよね」

     女性はしばらくポカンとしていましたが、気まずそうにいいました。

    「すみません。あなたいったこと、わかりません。わたしラテン語まだまだですね」

    女性はハンフリーの方を向くと「【C】Excuse me, my husband told me to come back quickly.」といって、そそくさといってしまいました。

     ハンフリーはしばらく下を向いて、こみあげてくる笑いをこらえるのに必死のようでした。「いやけっさくだな、バーニー(That’s hilarious, Bernie.)」

    「あのお、オイラなんか失礼なこといったんすかね(Did I say anything inappropriate to her?¹)」

    「そんなことないさ(No, you didn’t. Don’t worry.)。ただ、あれは首相夫人でね。いつも鼻につくことっきりいわないお偉方なんだぜ。ただし、彼女のようなラテン語初心者には、キミの語彙力についていくのは無理ってもんだろ(Well, it’s almost impossible for her to catch up with your vocabularly, I guess.²)」

    「そうだったんすか(Oh, I didn’t know that.)。なんか、オイラはオイラで、英語ときたら自信ないんすけどね(I’m not confident in my English.)」

     ネコが申しわけなさそうにいうと、ハンフリーはグラスを一気に飲み干してから英語でいいました。

    【D】「You used to be a brilliant English speaker, too.」

    「Did I?」

    「Yes. You posted your opinions on some magazines in English. You were an expert on the performing arts. I was often impressed with your essays. They never failed to give me fresh perspectives.」

     ネコが首をかしげて聞いていると、ハンフリーは長い髪を耳にかけながら真顔で語り出しました。

    「今回の公演で特に感銘を受けたのは、わたくしはバレエですね。ストーリーラインの普遍性と卓越した技巧の上に成り立つ伝統的様式美、そして創造的主観性を駆り立てるという芸術本来の価値が見出せる程、記憶に残る演目でしたね」

    「オイラも同感です(I agree with you.³)」とネコがいうと、ハンフリーはまた吹き出しています。

    「劇場関係は好きじゃないんすか、ハンフリー(Don’t you like theatre stuff, Humphrey?)」

    「ああ、正直まったく興味なくて(To be honest, it doesn’t impress me at all.⁴)。自分では文学や言語、それに哲学なんてやったけど、どれも心からはまったことはないね(I studied literature, language and philosophy, but none of them captured my heart really.⁵)」

    「そうすっか。 まあ、オイラも今日は男性のタイツ姿はいただけないなって思ったんすけど(Honestly, I found the men in tights quite embarassing today.)」

    「はは。 なんか以前より今のキミの方が、オレはずっと好きだな、バーニー(I like this new Bernie.)」

     ハンフリーはそういうと、椅子のそばを通り過ぎていく観客をしばらく眺めていいました。

    「あのさ、このバレエってのはある国のプリンスの話だよな(This ballet tells a story about a certain prince, doesn’t it?)。彼は見かけだけの美しい女性を自分の愛する人だと勘違いして、結局は湖に落ちて溺れてしまうんだぜ(He mistook a beautiful girl for his lover and drowned in a lake at the end.)」

    「そうなんすか(Did he?)。 なんか真実を見抜けないプリンスってのは、身に沁みるっすね」

    「それよりオレがいいたいのはさ、ここに来てる王族ネコって誰もが受動知性だけで、能動知性が働いてないってことだ」

    「?」

    「つまりさ、オレたちこうしてもう10分以上、このバーにいるだろう? なのにキミがプリンスだってことに気がつくやつが誰もいないって、どうなっちゃってんだい?」

    「Isn’t it because I look like a rice ball with the ink between my ears? That’s why they can’t notice that I’m a prince.」

     ネコが恥ずかしそうに額をなでると、ハンフリーは吐き捨てるようにいいました。

    「そういう瑣末なことに惑わされるから、愚かだっていってるんだ。オレは10メートルの距離が離れてたって、すぐにキミだってわかっただろ(I spotted you from more than ten metres away.⁶)。真実を見抜くには、視覚だけじゃない(You can’t see the truth with only visual information.)。むしろ頼れるのは、もっと他の情報だってことを知ってるからね」

     ハンフリーがそういいながらネコの肩を軽くたたくと、パーンという銃声が轟きました。続いて「キャー」という悲鳴とともに、「伏せろ」という怒鳴り声がします。パラパラパラと銃弾の音がして、それがいったん止むと人々が押し合うように劇場から飛び出してきました。火薬の匂いがプーンと室内に広がりました。

    ¹ anything inappropriate 何か不適切なこと(anything+形)

    ² catch up with ~ 〜に追いつく

    ³ agree with ~ ~に同意する

    ⁴ to be honest 正直にいうと

    ⁵ none of ~ 〜のどれも…ない

    ⁶ ~ away ~離れて(距離・時間)


    《日本語訳》

    【A】

    「まあ、アエロパギタさん、ここにいらっしゃってるとは存じませんでしたわ」

    【B】

    「お会いできてうれしいです、クレメンスさん」

    【C】

    「ごめんなさい、夫が早く席に戻るよう申しておりますの」

    【D】

    「キミは英語を話しても素晴らしかったよ」

    「オイラが?」

    「ああ。キミは英語で雑誌に投稿してた。舞台芸術に関して専門家だったしね。キミのエッセイにはよく感心させられたもんだよ。必ず新たな視点を提供してくれたからね」


    🐤ブンポウの話

    【文中の表現】

    A)Isn’t it because I look like a rice ball with the ink between my ears?

     それって、耳の間のマジックでオイラがお結びみたいに見えるからじゃないっすか?

    B)That’s why they can’t notice I’m a prince.

     だからオイラがプリンスだって気がつかないんすよ

    ●becauseの用法

    A)It’s because ~ 「それは〜だからだ」 

    B)That’s why ~ 「だから〜なんだ」 

    ◎以下の基本的用法も確認しておこう

    ・We stayed home because it was raining. ←カンマ入れる時もある

    ・Because it was raining, we stayed home.

    ・We stayed home because of the rain. (+名詞 or ~ing)

    🖊受動態のような形容詞

    文中の表現を見てみよう

    A)I was often impressed with your essays.

    B)It doesn’t impress me at all.

    B)のimpressは「感銘させる」という受動的なニュアンスをもつ動詞

    A)のimpressedはimpressの過去形あるいは過去分詞だが

    ⇒ここでは、受動的意味のimpressを受動態にして能動的意味に戻している

    👉このような単語は他にもある(両方使い分けると文章に変化が)

    ・surprise 驚かせる(be surprised at/by ~)

    ・disappoint がっかりさせる(be disappointed with ~)

    ・excite 興奮させる(be excited about ~)

    ・interest 興味をもたせる(be interested in ~)…

  • タイムカマド(第3章10話)

     

     ネコが劇場に着くと、入口の前は早くも人と王族ネコでごった返していました。群集の中で迷っていると、誰よりも大きなエナメル靴が近づいてきて、ネコが顔を上げるとそれがハンフリーでした。

    「見違えたよ(You look great!)。さすがプリンスだ(Very princely.)」と、ハンフリーはネコのタキシード姿を見ながら、やたら感心していました。

    「ただずっと聞きたかったんだけど、その額の黒い毛って最近生えてきたのかい?」

    「ああ、これ(You mean this?)」

     ネコが変装のため魔女にマジックペンでぬられたことを説明すると、ハンフリーは声を上げて笑いました。それから、握っていたチケットの番号を確かめると、劇場の座席案内人を次々とかわしながら、一階席のオーケストラボックスへと降りていきました。ネコが必死についていくと、彼らの席は前から八列目で、二階にあるロイヤルボックスがすぐ右上に見えます。

     「前の方は王族ばっかすね。だけどほとんどが民衆の席なんすね(The seats near the front are for the Royals, but most seats are for the common people, aren’t they?)」

    【A】「That’s right. This event is organized for the general public by the Royals. This royal theatre is quite famous for its 17th century architecture. It was built in 1663 by King Nicaea II, and it is now the oldest theatre in the country.」

     ネコはハンフリーの話を聞きながら、近くの座席のほとんどが、定例会議に忍び込んだとき見たことのある王族メンバーで埋まっていることに気づきました。その中にはこちらを振り返ってくるものもいるのですが、誰もネコがプリンス・バーナードだとは、わからないようです。 

     「おや、ピピン殿下ですぞ(Oh, here comes Pippin!)」と、どこからか声が上がって、ロイヤルボックスを見上げると、赤いジャケットに身を包んだキジトラのピピンが、にこやかに観客に手を振っていました。 ところが、観客の方は感心がまるでないのか、まったく拍手をするものがいません。

    「なあに、あいつはこんなこと気にしないさ(I’m sure he doesn’t care.)。 オレたちとは神経が違うから(He has a lot of nerve.)」と、ハンフリーは面白そうにいいました。

     いよいよベルベットの幕がスルスルと開きました。まずは何百年も前に作曲されたというカンタータから始まりました。 甲高い声を出していますが、歌っているのは男性でした。 それから長いドレスと燕尾服にハット姿の何組もの男女が出てくると、歌いながらくるくる回ってダンスします。

    「どうして、あの人たちはセリフをいうのかなと思ったとたん、すぐ歌い出すんすか?」とネコが小声で聞くと、ハンフリーは大笑いしていました。

     お次は、コメディアンによるトークショーです。会場中が笑いで包まれました。ピピンを見上げると、彼も腹を抱えて笑っていました。

    「あいつ、ふりしてるな(I know he’s pretending.)」とハンフリーがネコの耳にささやきます。

    「ふりって、面白くないのに笑ってるってことっすか?」

    「あたりまえだよ(Of course.)。これは英語のトークショーだ(This is a talk show in English.)。 あいつが聞き取れてるわけがない(I’m quite certain that he can’t keep up.¹)」

     いよいよバレエが始まりました。 舞台背景の空間演出が素晴らしく、踊り手のエレガントでありながらアクロバティックな動きが生の音楽と一体になり、軽やかなジャンプやピルエットがピタッと止まると、観客は割れんばかりの拍手をしています。

    「どうだい? 感動しただろう(I guess you found it very impressive?)」とハンフリーに聞かれてネコがうなずくと、ハンフリーは満足そうに笑いました。

    ¹ keep up (スピードなどに)ついていく


    《日本語訳》

    【A】

    「そうそう、これは王族が主催する民衆のための催しなんだ。この王立劇場は17世紀の建築としてすごく有名でね。1663年にニカイア二世によって建てられ、今ではこの国で最古の劇場だ」


    🐤ブンポウの話

     いよいよ動詞の過去形「不規則変化」の時に覚えておいた「過去分詞」を使って、

    「〜られる」という受け身の表現を覚えよう。

    【文中の表現】

    □This event is organized for the general public by the Royals.

     この催しは、王族によって民衆のために開催されている

    □It was built in 1663 by King Nicaea II.

     それはニカイア二世によって1663年に建てられた

    ●受動態 「be動詞+過去分詞」

    ポイント

     時制、助動詞、副詞などと組み合わさり、一見複雑な構造の時⇒正しい意味を取るためには、be動詞とそのまわりの単語に注目すること

    例)

    ・I’m being bullied in the class.(受動態+現在進行形)

     私はクラスでいじめられている

    ・His work might be appreciated in his team.(受動態+助動詞)

     彼の仕事は、彼のチームの中で評価されているのかもしれない

    ◎二つの目的語がとれる動詞は、二つの受動態に書き換え○(🔑3-9参照)

    ・My grandfather gave me this watch.

    ⇒I was given this watch (by my grandfather).

    ⇒This watch was given to me (by my grandfather).

    ◎〜によって(byとwith)

    ・The door was opened by somebody with a key.

    👉受動態「get」

    ◎何かが起こった感覚

    ・There was a fight, but nobody got hurt.

    ㊟以下の表現は、意味的には受動態ではない

     get married/get divorced/get lost/get dressed/get changed

  • タイムカマド(第3章9話)

     ネコは電話を切ってから、再びベッドに横たわりました。誰もいないホテルの部屋で本来ならばゆったりできるはずなのに、ハンフリーがいっていた「キミの好きなバレエの第二幕」という言葉が、頭の中に浮かんでは消え、消えてはまた浮かんでくるのでした。

     そのうち言葉は風変わりなネコの姿に変わって、「私はキミと違って生粋のプリンスなのだよ(I’m a genuine prince unlike you.)。仮にキミが記憶を取り戻したとしても、キミとわたしをいっしょくたには扱わないでくれたまえ」と気取った口調でいいました。

    「はあ、でもオイラ、バレエっていわれてもね(I don’t know the first thing about ballet.)」

     ネコは時間が経つにつれ、ガラにいこうかいくまいか、前より迷いがつのってきました。どう考えたって、かつて劇場にいた記憶など自分にはまるでないのです。そこがどんな具合のところなのか、今ひとつ見当がつきません。それでも、ハンフリーがせっかく誘ってくれているのだし、また会って話ができることは、この上ない楽しみのようにも思えました。

     ネコはどうしたものかと、しっぽでベッドをピシャリと打ちつけました。すると、どこからか声がします。

    「息子よ、少し羽を伸ばしてきたらどうかね(Why don’t you let your hair down, my son.¹)。わしはこのとおり、まだ無事でいるんだから(I’m still safe, as you can see.²)」

     ベッドの端に置いたままだった現金がヒラリと舞って、カーペットに落っこちました。紙幣の裏にはカール大帝の横顔が印刷されていて、こちらに視線を送っています。

    「父上、あなたがそうおっしゃるのなら」と、ネコのこころが決まりました。

     ハンフリーが教えてくれた紳士服の店は、ショッピングで名高いバシリカ通りにある大型靴店を南に入ったところにありました。狭い区画には仕立てから請け負う高級紳士服店が、ところ狭しと軒を連ねています。入口についた番地のプレートを確かめてから店に入ると、スーツ姿の店員が首にメジャーをかけたまま、ネコに丁重にあいさつしてくれました。

     店内では、スーツは民衆セクションと王族セクションに分かれていて、ネコはもちろん王族セクションに通されます。

    【A】「I would like a dinner jacket, please.」とネコがいいました。

    「For yourself, Your Highness?」

    「Yes, for myself.」

     店員はネコの胸回りをメジャーで測ると、何着かの上着をハンガーごともってきました。ジャケットは色だけ違ってどれも同じに見えたので、とりあえず試着もしないで一枚を選ぶと、店員は「【B】A shirt as well, Your Highness?」と聞いてきます。ネコがシャツも素早く色で決めると、店員は思い出したように、ちょっとした世間話を始めました。

    【C】「Yesterday a woman came to our shop. She bought her brother a black jacket, so we gave her a special coupon. She thanked us a lot and then bought two black ties for him. We thanked her and gave another coupon to her. Then she used her two coupons to buy herself a special paper clip with our logo.」

     ネコがジャケットを着ると店員がクーポンをくれました。ネコが蝶ネクタイを選ぶと、店員がもう一枚クーポンを渡してきます。ネコが鏡の前で蝶ネクタイを着けていると、店員はかしこまって、両手をすり合わせながら見ていました。

     ネコは会計を済ませると、店員はレシートに店のロゴ入りクリップをくっつけて渡してきました。ネコはもっていたクーポン二枚を店員に返すと、店員は腰をかがめてそれを受け取ります。それから、そそくさと先にいくと、ガラスの扉を目一杯開けて、深くお辞儀しながらネコを送り出してくれました。

    【D】「You look brilliant, Your Highness. We are looking forward seeing you again.」

     ネコはクリップごと、レシートをジャケットのポケットに押し込みました。

    ¹ Let your hair down リラックスする

    ²  as you can see 見てのとおり


    《日本語訳》

    【A】

    「デイナージャケットが欲しいんですが」

    「ご自身用ですか、殿下?」

    「はい、自分用です」

    【B】

    「シャツもでございますか、殿下?」

    【C】

    「昨日一人のご婦人がご来店されました。彼女は弟さんに黒いジャケットを買われましたので、私どもは彼女にスペシャルクーポン券を一枚、差し上げました。彼女はとても感謝してくれて、弟さんに黒いネクタイを二本買われました。私どもは、彼女にお礼を申し上げ、もう一枚のクーポン券を差し上げました。そしたら、彼女は自分用として店のロゴ入りペーパークリップを買うのに、差し上げたクーポン二枚を使ってくださったんです」

    【D】

    「殿下、最高にお似合いです。またのご来店お待ち致しております」 


    🐤ブンポウの話

     ここでは、二つの文型が成り立つ動詞(buyとgive)について見ていこう。

     

    【文中の表現】

    A)She bought her brother a black jacket. (SVOO)

     彼女は弟に黒いジャケットを買った

    B)We gave her a special coupon. (SVOO) 

     私たちは、彼女に特別なクーポンをあげた

    C)She bought two black ties for him. (SVO)

     彼女は彼に二本の黒いネクタイを買った

    D)We gave another coupon to her. (SVO) 

     私たちは、彼女へもう一枚クーポンをあげた

    ●二つの文型が成り立つ動詞

    ◎give/lend/pass/send/show/buy/get


    👉二個めのO(SVOO)に代名詞は置けない!

    ⇒I gave it to Sarah.(I gave her it.×)

  • タイムカマド(第3章8話)

     ミリーは三時のお茶の時間になっても、オフィスにこもって仕事をするようにしている。ビル内の喫茶室は席を確保したところで、どうせ三時半には閉店だし、外にいってまで店を探す気にもなれない。それというのも、最近の店ときたらどこもかしこもコーヒー専門店ばかりで、ミリーには耐えられない。なにしろミリーはその匂いを嗅いだだけで、逃げ出したくなるほどコーヒーが嫌いなのだ。

     ところがその日の午後は、ミリーは久しぶりに外を歩きたくなった。昼を過ぎた頃から、ビルの窓から青い空が広がってくるのが見えたし、こんな天候の変化はまるで誰かの魔法が効いているかのようだ。

     下に降りて受付ロビーを通過すると、スーザンはもう業務を終了していた。細長い机の隅には、代わりに自動内線機だけがポツンと置かれている。ミリーは彼女が誰かからガラのチケットを確保したんだと、自慢気にいっていたのを思い出した。なんともラッキーな話だ。

     ミリーはビルを出ると、目の前にある信号を待っていた。広場にあるベンチまでいくなら右に入ればいいし、柳の下をくぐってアヒルに会うなら、そのまままっすぐだ。何気なく道路を隔てたコーヒー店に目をやると、店の中に見覚えのある顔がチラリと映った。とはいっても、このあたりにあらわれるのには、ちょっとあり得ない顔だったから驚きだ。

     ミリーは自分の目を疑ったので、歩道を渡ると店のガラス越しにその人をもう一度確認してみた。やっぱり間違いはない。そこで、ガラスにへばりついたまま思い切って手を振ってみるのだが、相手はどこを見ているのかわからないほど無表情でボーとしていて、こんなことをしている自分の方が恥ずかしくなってくる。

     仕方ないのでミリーは入口にまわり込んで中に入ると、そこは案の定、気分が悪くなるくらいコーヒーの匂いが充満していた。それでも、黙ってとなりの席に腰かけてみると「【A】Milly? Oh, my goodness!」と、男はいすから転げ落ちそうになっている。

     【B】「Haha, but didn’t you know that I was working in that building? I myself didn’t expect you to be here. I thought you were attending His Highness at the theatre today.」

    「Well, I managed to escape two hours of boring entertainment. I took two days off.¹ My family phoned me last night and told me to come back today.」

    「Oh, your family in Petrus?]

    「How did you know that I was from Petrus?」

    「You told me about your family when we met last Sunday. You talked about some of your friends there while we were drinking at the bar.」

    「Did I?」

     男はそう答えただけで緊張しているかのように息を飲んだ。そして、腕時計を見ながら立ち上がると「【C】Sorry, Milly, no time to talk now. I would miss my train.²」といいながら、逃げるように店を出ていってしまった。

     取り残されたミリーは神経質そうに腕時計のバンドをまわし初めた。

    「変なヤツ(Weirdo!)」とあきれたようにつぶやくと、少し前の席にいた女性がミリーの声を聞きつけたのか、振り向いてこちらを見ている。どこかで会ったことのあるような、それでいてすぐ忘れてしまいそうな特徴のない顔立ちをしていて、一見優しそうではあるものの、タダでは引かない押しの強さを秘めているような、年齢不詳の女性だ。

     ミリーは彼女が立ち上がってバッグを斜めにかけるのを見て、ハッとなった。

    【D】「I just remembered! This lady came to my office in the morning and she had a cat in that bag. He stuck his neck out and looked at me with his beautiful eyes.³」

     ミリーは女性に声をかけてみようかとも思った。ところが彼女もスタスタと店を出て、あっという間に人混みの中に消えてしまった。

    ¹ take (two days) off (2日間)の休みを取る

    ² would (話していたら電車を逃すことになるだろう) 仮定法的推測

    ³ stick ~ out 〜を突き出す


    《日本語訳》

    【A】

    「ミリーなの? びっくりした」

    【B】

    「はは。だけど、あたしがあのビルで働いてるってこと知らなかったの? こっちだって、あなたがここにいるとは思わなかったわ。今日は殿下の付添いで劇場にいるんだと思ってた」

    「まあ、どうにか二時間の退屈なイベントはまぬがれたんだ。二日間の休みを取ったのさ。夕べ家族が電話してきて、今日帰るようにいうもんだから」

    「ああ、ペトルスにいるご家族よね?」

    「どうして僕がペトルス出身って知ってたの?」

    「先週の日曜に会った時、あなたが自分の家族のこといってたじゃない。わたしたちバーにいる間、あなたはそこにいる友人のこと話してたわ」

    「そうだっけ?」

    【C】

    「ごめん、ミリー。今話してる時間ないんだ。電車に乗り遅れちゃうから」

    【D】

    「思い出した。この人今朝オフィスに来て、あのバッグにはネコが入ってた。ネコは首を出してきれいな目であたしを見てたな」


    🐤ブンポウの話 

    【文中の表現】

    A)You told me about your family when we met last Sunday.

     私たちが先週日曜に会った時、あなたは自分の家族について話した

    B)You talked about some of your friends there while we were drinking at the bar.

     私たちがバーで飲んでいる間、あなたはそこにいる自分の友人のことを話した

    ●接続詞を使った文

    ◎二つの文をつなげている

    A)は次のようにも(カンマ入れる)

    ⇒When we met last Sunday, you told me about your family.

    B)は次のようにも(カンマ入れる)

    ⇒While* we were drinking at the bar, you talked about some of your friends there.

    ㊟*duringなら+名詞

    ・We talked about art during the play.(while the play✕)

    👉接続詞は、他にも例えば以下のようなものがある

    Before/After

    ・ We talked about art before we went to the play.

    ⇒書き換え(主語が同じ場合)

    ・We talked about art before going to the play.

     

             🔑前置詞before/after(2-11参照)

  • タイムカマド(第3章7話)

     電話口のハンフリーはひどく上機嫌らしく、彼の話は細かな確認から始まりましたが、親密さにあふれて、どこか楽し気に聞こえました。

    「キミがこうして電話を取ってくれて、正直うれしいよ(I’m honestly so glad that you picked up the phone.)。王族ってのは、この手の通信機器は敬遠するだろ(The Royals usually avoid electrical equipment.)。だから、この電話もひょっとしたら無視されるんじゃないかとも思ったんだ」

    「自分で取るしか仕方なかったんすよ(There was no other way than to answer it myself.)。カサンドラが留守してるんす(Cassandra is out.)。ショッピングだとかいって消えちゃって」

     ネコがそういったとたん、ピピッとかすかな音がして音声が途切れました。どうやらハンフリーは仕事で忙しく、連絡に追われているようです。

    「ごめん、バーニー申しわけない(I’m sorry, Bernie.)。キャッチホンだった。いや、今日はずいぶん引っかき回されてるものだから …。ピピンだよ」

    「ピピンすか?」

    「そう。キミは彼については、何か覚えてることはあるの(Do you remember anything about him?)」

    「いや、叔父だってことは聞いて知ってんすけど、彼の記憶は全くないんす(I heard he is my uncle, but I can’t remember anything about him.)」

     ネコはそのときハンフリーに、自分は密かに城に忍び込んで、ピピンにも会ったことがあるのだと、正直にいっておこうと思いました。ところが、ハンフリーはピピンに対してかなり不満があるらしく、夢中で話を続けています。

     「He looks like an adult cat, but I wonder how old he is? 何もわからないところを見ると、まだ子どもなんじゃないかとも思ってさ。だって、あいつったら勝手に省内に通達してきて、民衆を片っ端から調べて、金のブレスレットをもっているものがいたら、それだけで摘発しろなんていい出したんだぜ」

    「金の首輪が見つからないからっすよね」

    「そうだけど、だいたいアイツはわかってない(I know, but he doesn’t understand.)。警察が民家に侵入して、ブレスレットのためだけに、どのタンスもどの引き出しも全部開けていくだなんて、できると思うかい(Do you think the police can get into any private house and open every drawer of every chest to try to find a gold bracelet?)。ここは立憲君主制なんだからさ(This country is a constitutional monarchy.)」

    「はあ?」

    「王族ってのは、『君臨すれども統治せず』だ(The monarch reigns, but does not rule.)。それに、第一この国で金なんかもってるものなんていやしないんだ」

    「金は高いんすか(Is gold expensive?)」

    「いや、金自体が取れないんだよ(No, we can’t produce gold itself.)。ここの金の産出量は過去900年間ゼロなんだぜ」

     ネコは、こっそり偵察に入った定期総会で、金の首輪について討論していたわけが初めてわかりました。確かに首輪が民衆の尊敬を集めるのは、それだけで王族としての長い歴史と伝統をあらわす価値あるものだからなのです。

     「もしもし? バーニー、いるのかい(Hello? Bernie? Are you there?」

    「あ、はい。聞いてるっす(Yeah, I’m listening.)」と、ネコはあわてて返事をしました。

    「いやあ、実は今日電話したのはピピンのグチをいうためじゃなくてさ(I didn’t phone you today to complain about Pippin.)。I wonder if you are available to join me at the Royal Gala this evening?」

    「なんすか、そのロイヤルガラって(What on earth is the Royal Gala?¹)」

     ネコの質問に、ハンフリーは電話口の向こうで大笑いしているようでした。それでも、彼の説明を聞いてみると、ガラ公演は毎年秋に開かれる舞台芸術のお披露目会のようなもので、笑う理由なんてどこにもない真面目な劇場での催しのようです。

    「そうそう、今年は大帝がいないから、代理にピピンがロイヤルボックスで観覧する予定なんだぜ。ところで、ガラはタキシード着用だけど、キミもってないよね(By the way, we have a dress code for the Gala. Do you have a dinner jacket now?)」

    「そんなもん、記憶でも着たことないっすよ」

     ハンフリーは、ネコに自分の行きつけの紳士服の店を教えると、ジャケットをそこで調達したら、それを着たまま劇場に直行すればいいといいました。

    「キミの好きなバレエの第二幕も観られる(You can watch your favourite ballet performance, Act Two.)。楽しめることはうけあうよ」

     ハンフリーはそういうと、うれしそうに電話を切りました。

    ¹ on earth 一体全体(疑問詞につける)


    🐤ブンポウの話 

    【文中の表現】

    □He looks like an adult cat, but I wonder how old he is. ㊟how old is he✕

     彼は大人のネコに見えるけど、彼って何才なんだろう? 

    □I wonder if you are available to join me at the Royal Gala this evening. 

     あなたは夕方のロイヤルガラに、私といっしょにいけるだろうか?

    ●I wonder ~?

    ◎「~だろうか?」と思いをめぐらす

    ◎人に何か依頼する時にも使える

    🔑組み立て方は「間接話法(2)」(3-4参照)

    🖊every

    ◎モノをグループとしてとらえる(三つ以上あるとき)

    ◎allに近い意味だが、単数受け(every drawers✕)

     ㊟頻度表現→every ten minutes 十分ごとに

    👉eachはeveryと違って …

    ◎モノを一つ一つ個別にとらえる「それぞれの」

    ⇒Study each sentence carefully.

    ◎単独で使える

    ⇒Each is different.

  • タイムカマド(第3章6話)

     ネコと魔女は、ホテルのラウンジで軽く昼食を済ませると、自分たちの部屋に戻ってきました。さっきまでの曇り空がぱっと晴れて、ブラインドを開けたままにしていた窓から、午後の陽光が射し込んできます。

     ネコは目がチカチカするので、「Do you know how to close the blinds? ポーターを呼んだ方がいいんすかね(Should I call a porter?)」と魔女に声をかけました。

    「リモコンがあるんじゃないの(Isn’t the remote control right there?)」と魔女はバスルームから出てくると、両方の手に一個ずつアメ二ティの袋をもっています。

    「あのさ、これってお前いらないだろ(You don’t need this, right?)」

     魔女は片方の袋を軽く上げてネコに確認すると、バッグにさっそく袋を二つ詰め込みました。

    「たった今チェックインしたばっかりなのに、なんでそんなことしてんすか?」

    「だって、ここは『過去カマド』なんだよ。あたしら優雅にチェックアウトなんて、やれるとは思えないし」と、魔女は今度はバッグの底から皮の財布を取り出しています。

    「あのさ、魔女っていうのは一人でゆったりお茶を飲んだり、好きなことを隠れてコソコソやる時間ってのが必要なんだ。だからあたしは、この街でショッピングっていうのにくり出してみようかな」

    「えー、 それってありっすか? せっかくこのホテルをとったんすよ。ギリギリまでお父上の捜索をするんじゃなかったんすかね?」

    「そりゃそうだけど、あたしらがやるような捜索は、警察ってのがもうさんざんやってるはずだし、これ以上同じことしたって、時間の無駄ってもんだろう?」

    「?」

     魔女はベッドに横たわるネコのところに歩み寄ると、片手を腰に当てていいました。

    「いいかい、どんな時でも必要なのはアイデアなんだ」

    「アイデア?」

    「うん、捜査のための突拍子もないアイデアさ(Yes, an original idea for the investigation.)。今のお前をみたところ、ゆったりしすぎてて、そんなもん当分湧いてこなさそうなのはわかってる。だったらあたしは何すればいい? それはさ、あたしはあたしで、勝手に自分の時間を使ってやりたいようにやってみる。そうすれば、アイデアの方からここに飛び込んでくるってもんなんだ」

     魔女は自分の頭を二三度指で小突きながら、したり顔でうなずきました。それから財布から紙幣を何枚か抜き取ると「少しだけ置いてくよ。何かのときに必要かもしれないから」とネコに渡して、ブーツのひもを閉め直すと、さっそうと出かけてしまいました。

     「ふん、罪の意識ってやつっすかね(A sense of guilt, I guess?)」と、ネコはベッドの端に紙幣を置くと、つま先までの伸びをしました。

    「そりゃ、突拍子もないアイデアなんて、オイラには簡単に思い浮かぶものじゃない。だけど、考えてもみてごらんって(I know it’s not easy for me to come up with an original idea, but just think about it!¹)。あのとき、あの会議に忍び込めたのは、パッと浮かんだあの合言葉のせいだ(I managed to sneak into the meeting at that time because I came up with the password.²)。あれこそ、天才のひらめきってもんだったけどね(That was really a stroke of genius.)」

     ネコはふと、自分に起こった城での出来事を、どうしてハンフリーにも話しておかなかったんだろうと思いました。

    「アイツの書斎には、あんなに本があったしな(There were so many books in his library.)。He knows what to say and when to say it. なにしろ、彼は言葉の魔術師なんだから(He is, after all, a magician of languages.³)。それに文法だって、あんな冊子が書けるほど細かいところまで知り尽くしてる。ひょっとして、あのクモだってハンフリーから言葉を習ったのかもしれないしな。待てよ(Wait a minute …)」

     ネコは、クモが言葉を覚えたのは刑務所だといっていたことを思い出しました。そのときベッドの横で電話機がけたたましく鳴って、ネコはびっくりして天井まで跳び上がります。ボタンを押すと「ハンフリーだけど(This is Humphrey speaking.)」と声がしました。

    「やあ、ハンフリー(Hi, Humphrey.)。いまキミのこと考えてたんすよ(I was just thinking about you.)」

     ネコはそう答えながら、着地したベッドの上で足首がぐらつくのを感じました。

    ¹ come up with ~ ~を思いつく(アイデアなど)

    ² sneak into ~ ~に忍び込む

    ³ after all 結局は


    🐤ブンポウの話 

    【文中の表現】

    □Do you know how to close the blinds?

     ブラインドの閉め方わかりますか?

    □He knows what to say and when to say it.

     彼は何をいうべきか、そして、それをいついうべきか知っている

    ●疑問詞+to不定詞「~すべきか」

    ◎塊(名詞句)として使う

    ◎以下の形を押さえておこう

    ・what to do 何をすべきか

    ・how to do どのようにするべきか、〜のやり方

    ・where to go どこへいくべきか

    ・when to do いつするべきか


    🔑電話で使うThisとThat(1-3参照)

  • タイムカマド(第3章5話)

     一階の入口までいっしょに階段を下りながら、アレオパギタはひっきりなしに腕時計で時間を確認しながらいいました。

    「本当だったら、いっしょに魚のランチってとこだけど、在宅で仕事が詰まっててね、バーニー」

    「そうすっか? だったらオイラ次回を期待してるっす、アレオパギタさん(Then, I look forward to our next chance, Mr Areopagita.¹)」とネコが答えると、「オイラのことは、ハンフリーって呼んでくれっすよ(Please call me Humphrey.²)」とアレオパギタがいったので、みんなが一斉に笑いました。

     「気を悪くしないでくれよ、バーニー(Don’t take it personally, Bernie.)。どうもキミは魅力的すぎて、いつもからかいたくなるキャラだからさ(I can’t help teasing you because you’re so adorable.³)」

    「全然いいっすよ(That’s alright.)。オイラ、会えてうれしかったす、ハンフリー(I’m happy to see you, Humphrey.)」

     呼んでおいたタクシーが表通りに止まりました。

    「じゃあ、何かあったら連絡下さい、カサンドラ(Please keep me in the loop, Cassandra.⁴)」

    「わかりました(I will.)。 ホテルの予約ありがとう(Thank you for booking a hotel for us.⁵)。本当に助かりました(It helps a lot.)」

     タクシーに乗り込むと、魔女は小さい窓をのぞき込むようにして、小刻みに手を振りました。そして車が最初の角を曲がったとたん、「ねえ、お前、あたしらちょっとついてきたんじゃないかい(Things are looking up for us, aren’t they?)」と開口一番に声を上げます。

    「へえ、どうしたんすか、カサンドラさん(What’s the matter, Cassandra?)。もう、すっかりいつもの口調に戻ってるっすよ。プリンスであるオイラのことは、「お前」だなんて呼び捨てだし、しゃべってた話はウソばっかだったし」

    「ウソ? じゃあ、あたしが本当はホーキに乗る魔女でさ、タイムカマドを使ってここに来てるってこと、アイツに説明しとけばよかったっていうのかい?」

    「まあ、そりゃそうすっけど」と、ネコは車の走る進行方向をじっと見ながら、少し不満気にいいました。

     「彼のことは、信用できなかったんすね(You couldn’t trust him, could you?)」

    「えっ? ああ、まあ完全にはね(Pardon? Err, no, I didn’t fully trust him.)」

    「ミリーはどうです(How about Milly?⁶)」

    「I didn’t trust her either. Neither of them were trustworthy. Both of them were sketchy.」

    「そうすっか(You think so?)。オイラ、今日は自分に腹立ったんすよ。目の前に兄弟だって人が出てきたのに何も思い出せない。正直申しわけないんすよ。だって、お結び顔になってるオイラをプリンスだって認めてくれたのは、今のところハンフリーだけなんすから」

    「なるほどね(I see.)。まあ、焦ることはない(No need to rush.)。 だけど大帝のスピーチライターだったのは知ってたけど、あの書斎の本の数にはたまげたさ。それにアイツはまだ若い(He’s still young.)。それでいてウソは見抜く(However, he’s wise enough to see through people’s lies.⁷)。なんか、あたしはいけ好かないな(To me he’s just insufferable.)」

     魔女が何といおうと、ネコは自分を昔から知っている仲間がいたと考えただけで、心が温まってくるのでした。

    「それに、ここは『過去カマド』なんだ(We are now in the “Past Cauldron”.)。ミリーがオイラのことをわからなかったのは当然だし、ひょっとするとまた先の時間で、オイラはミリーと話してるのかもしれないしな(It’s understandable that Milly didn’t recognise me, but I might be talking with Milly in the future.)」

     ネコの頭が整理されたところで、タクシーはホテルに到着しました。支配人本人が出迎えてくれて、直接応対してくれます。部屋は申し分なく広く、ポーターが壁一面にかかったブラインドを開けてくれると、曇り空の下でビルの間を蛇行している河の風景が、パノラマになってあらわれました。

    ¹ look forward to ~ ~を楽しみにする

    ² call… (SVOC)1-9参照

    ³ can’t help ~ing ~せざるを得ない

    ⁴ keep me in the loop 進展があったら知らせて

    ⁵ Thank you for ~ing ~をありがとう

    ⁶ How about ~? ~はどうです?(意見 を聞く) 

    ⁷ see through ~ ~を見抜く


    🐤ブンポウの話 

     文中の表現を訳す前に、以下の基本文に目を通しておこう。

    《設定》

     友人と食事の予定だが、レストランの候補が二つあがっている

    ◎We can go to either restaurant. どちらかのレストランにいくことができる

    ◎Neither restaurant is expensive. どちらのレストランも料金は高くない

    ◎Both restaurants are good. 両方のレストランがいい

    ポイント

    ・either/neitherの視点は「どちらか一方」bothは「両方とも」

    【文中の表現】

    A)I didn’t trust her either. 私は彼女もまた信用しなかった*

    B)Neither of them were trustworthy. 彼らのどちらも信用おけなかった

    C)Both of them were sketchy. 彼らの両方ともいかがわしい

                    *もう一人はアレオパギタを指す

    ●either/neither/both

    A)否定+文末either 「~もまた …ない」

    B)「neither of ~」の表現では、複数受けも〇

    C)「Both of these(those/the/my/Tom’s …) ~」 などの表現の場合、ofの省略可

     ⇒both these restaurants〇

      ㊟代名詞つなげるofは省略不可→both them✕

    🖊howeverとbut

    ◎文頭または文中に置かれるHowever

    ・The fish was good. However, it had a few bones.

    ・The fish was good. It had, however, a few bones.

    ◎二つの文をつなぐbut

    ・The fish was good, but it had a few bones.

    👉カンマの使い方に注意しよう

  • タイムカマド(第3章4話)

     ネコは魔女がこれほどまでに、話の下手な人だとは思ってもみませんでした。魔女はまず最初にクリーナーの仕事について、それがどんなものなのか、どうしてそれをやるようになったのかを熱っぽく語っていました。それから、自分が仕事にどんな新しいアイデアを取り入れて挑んでいるか詳細にまで話が移ると、さすがのアエロパギタも椅子から足を投げ出して、ふんぞり返っていました。

     次に魔女は「現在カマド」での旅行の話を始めました。ところがそれは「過去カマド」の人々にとってはこれからやってくる未来の時間なので、終わってしまったなつかしい思い出として大げさに語られると、それを知っているネコにとっては、やたらウソっぽく聞こえるのでした。

     「それでその後、あたしたち列車であの美しいお城にもいったんですよ(We went to the beautiful castle by train after that.)。駅前では観光客がいっぱいで、そこから馬車に乗るのは諦めたんですけど、遠くからでもバルコニーさえ眺めたりすれば、記憶が戻ってくるかと思ったんです。それに、彼もそういいはったんです。『旅行したら何か思い出せるかも』って。そうよね、バーナード?」

     魔女に横でお尻をつねられて、バーナードも「いー、うん」とだけ同意しておきました。

    「それじゃあ、そもそもあなたたちは、どうやって出会ったんですか(How did you meet each other in the first place?¹)」

    「それは、あたしがさっきも申しちゃいましたように、クリ―ナーの仕事で疲れて帰ってきた時、バーナードが野良として家の近くを歩いてたんです。【A】I asked him where he lived, but he didn’t know. Then, I asked him who he was, but he didn’t know that too.² So, I asked him if he remembered anything, but he said he didn’t remember anything at all³, その頃、プリンスがいなくなったって王室が騒ぎだしたのを耳にして、すぐにピンとはきたんですけど」

     アレオパギタがそのとき身を乗り出して、「カサンドラさん。それでもバーナードを城に戻そうとは思わなかったんですか(Still you didn’t think of taking Bernard back to the Castle?⁴)」と詰問調で聞いてきたので、魔女は少しうわずった声で答えました。

    「ええ、だって王室ではその頃カール大帝もいなくなってましたからね。 そんなところに記憶喪失のネコが自分はバーナードだなんてあらわれたって、悪い奴に利用されてしまいません?」

     アレオパギタは魔女の問いには答えずに、バーナードの手を優しく取って聞きました。

    「バーニー、本当にキミは何も覚えていないのかい(You really don’t remember anything, Bernie?)。子どもの頃、オレたち兄弟みたいに育てられたじゃないか」

    「兄弟ですんか?」

    「オレたち、いっしょに遊んだんだぜ(We used to play together.)。毎年夏にはキミのお父さんと休暇にいったな(Every summer, we used to go on holiday with your father.)。コテージに泊って、釣りをしてさ(We used to stay at the cottage and go fishing.)。ときどきキミは河に跳び込んだんだぞ(Sometimes you jumped into the river.)」

    「オイラたち、同じ家に住んでたんすか(Did we use to live in the same house?)」

    「そうだよ。キミがそこの一番広い寝室をひとり占めしてたさ(Yes, you used to occupy the biggest bedroom there.)」

     ネコが首をかしげるのを見て、アレオパギタは肩を落としました。魔女がおそるおそる「それじゃあ、どう思われます(What do you think?)。今、彼は城に帰るべきなんでしょうか(Should he go back to the Castle now?)。自分は無事だったからと王族たちを安心させるべきなんでしょうか?」と聞くと、アレオパギタはウーンとうなったまま、額に手を当てています。

     「バーナードが記憶喪失のまま王になるのは、他の王族が受け入れてくれるなら、それはそれでいいんでしょう。それでも問題があるんですよ。王のつける金の首輪がどこにあるか、大帝以外誰も知らないのです」

    「それじゃあ、やはり最初は大帝を探すことですよね(Well then, we must find Carl the Great first, mustn’t we?)」

    「まあ、そういうことです(That’s about it.)。諦めるのはまだ早いし、内務省でも必死に捜索はしているんですが。このところ誤情報ばかりに翻弄されてましてね。カサンドラさん、少し私に時間を下さい。あなた方にとって何がベストなのか、こちらでも調べてみますから」

    「まあ、そういって頂けるなんて、逆にとても心強いです」

     魔女がホッとしたようにバッグに手をかけ立ち上がると、アレオパギタは自分の携帯を出してきました。

    「そうそう、ラインはやってますか(By the way, are you on Line?)」

    「ライン? 私たち携帯はもってないんですが(We don’t have mobile phones.)」

    「そうだったよな、バーニー」とアレオパギタは残念そうにネコの肩に手をやると、「じゃあ、連絡はどこにすればいいですかね(How can I keep in touch with you?⁵)」と困ったように魔女を見上げました。

    「私たち、ちょうどホテルをこれから探すところなんです。今晩だけでもそこに泊まりますから」

    「だったら、支配人を知っているいいホテルがありますよ(I know a wonderful hotel, and I happen to know the manager there.⁶)。予約しておきましょう」

     アレオパギタは机の上に置いておいたカサンドラの名刺をつかむと、予約のためのフルネームを確認しました。すると、名刺に書かれていた「政治記者(Political journalist)」という文字が、「第一級清掃員(Top-class cleaner)」に変わっていました。

    ¹ in the first place そもそも

    ² then それから

    ³ not ~ at all まったく~ない

    ⁴ still まだ

      take(人)back to ~ (人を)〜へ連れ戻す

    ⁵ keep in touch with ~ ~と連絡を取り合う

    ⁶ happen to ~ たまたま~する


    《日本語訳》

    【A】

    「あたし、彼にどこに住んでるのか聞きましたけど、わからないんです。それから、彼が誰なのか聞いたんですけど、彼はそれもわからない。それで、何か覚えていることはあるのかって聞いたら、まったく何も思い出せないんだっていったんです」


    🐤ブンポウの話 

    ●間接話法 (2) 「〇〇は(~に) …か聞いた」

    例)

    ◎I asked him 疑問詞 …

    ◎I asked him if …

     ㊟イタリック部分は省略可

    【設定】

     魔女がネコと最初に会ったとき、ネコに聞いた質問は以下三つだったとする

    1)Where do you live?

    2)Who are you?

    3)Do you remember anything?

    ⇒彼女は、こうした質問をしたのだとアレオパギタへ報告する …

    ◎疑問詞のある文(1)と(2)

    1)I asked him where he lived. 私は彼に、彼がどこに住んでいるのか聞いた

    2)I asked him who he was. 私は彼に、彼が誰なのか聞いた

    ポイント

    ・疑問詞の後は肯定文の語順に直す

    ・人称代名詞を変える(視点替え)

    ・時制を統一

     ㊟クエスチョンマーク取れる

    ◎Yes/Noで答えられる疑問文(3)

    3)I asked him if he remembered anything. 私は彼に、何か覚えているかどうか聞いた

    ポイント

    ・if(whether)「~かどうか」でつなげる⇒肯定文の語順に直す

    ・人称代名詞を変える(視点替え)

    ・時制を統一

     ㊟クエスチョンマーク取れる

    👉こうした文は、もちろん直接話法のままでも表現できる

    ⇒I asked him, “Where do you live?” ←(1)の場合

    🖊used to ~

    ◎過去の習慣「~したものだ(今はしていないが)」

     ㊟否定文・疑問文では、used to ~がuse to ~になる

  • タイムカマド(第3章3話)

     ハンフリー・アレオパギタは、自分の書斎に続く狭い階段を上がりながら、かなり興奮して舞い上がっているようでした。

    「ちょうどミルクを切らして買いに出てたところだった(I ran out of milk and went to get some.¹)。もう少し戻るのが遅かったら会えなかったよ」とか、「こんな妙な感じを味わうのは人生で初めてだ。バーニー、生きていて本当によかった(I’m really glad you are alive, Bernie.)」などと、息をつく間もありません。

     それからネコと魔女を部屋に通すと、クッションをはたいて、まずはバーナードをソファにすわらせました。そして魔女にとなりの席をすすめると、「お茶はいかがですか(Would you like some tea?)」とあらたまって聞いてきました。

     魔女が答えに迷っているうちに、アレオパギタはもう部屋からいなくなりました。しばらくすると、ポットとカップの三つのったトレイを気をつけながら運んできます。

    「キミはコーヒーより紅茶だったよな、バーニー(You prefer tea to coffee, don’t you, Bernie?²)」

     アレオパギタはトレイをテーブルに置いたらすぐに、一人用の椅子に腰かけました。すると、さっきまでの冗舌さがすっかり失せて、部屋には他に誰もいないかのようにバーナードだけ見つめています。沈黙に耐えられなくなった魔女が、とうとう早口で切り出しました。

    【A】「Mr. Areopagita? I’m Cassandra. I came here today to return this book to you.」

    「Book?」

     【B】アエロパギタは差し出された本を手にすると、注意深く冊子にまで目を通していました。それから不思議そうに顔を上げて「How did you find it?」と魔女に聞きました。

    「Well, I was a cleaner in your office. I was cleaning your room one day, and I found it on your desk. I was very much interested in these sorts of books, so I just borrowed it.」

    「Oh, you borrowed it?」

    「Awfully sorry, sir. It was rude of me to do such a thing without permission.³」

    「Well, alright, understandable, but how did you find this address?」

    「Your secretary wrote it down on the back of my business card. We went to your office this morning without making an appointment with you.⁴」

    「Could I have the business card, please?」

     アレオパギタは渡された魔女の名刺を見た後で、手品師みたいに指先でそれをクルクルと回しながら、「カサンドラとミリーか(Cassandra and Milly.)」とつぶやきました。

    「そうっすよ、カサンドラはこの人っす、それにミリーってアンタの秘書やってんすよね(That’s right. This one is Cassandra. Is Milly your secretary?)」とネコが聞くと、アレオパギタは爆笑しています。

     バーニー、いつからそんな洗練された発音でしゃべるようになったんだい(When did you start talking with such a sophisticated accent, Bernie?)」

    「いつからっすかねえ?」

    そこで、魔女がすかさずいいました。

    「すみません(I’m sorry.)。バーナードは記憶を失っているんです(Bernard lost his memory.)。それでしばらく野良をやっていたようで、こうなったのかと」

     魔女が恥ずかしそうに頭を下げると、アレオパギタは魔女の方に視線を移して、驚いたようにいいました。

    「おや、あなたはラテン語も話すんですか(Oh, my! Do you speak Latin as well?⁵)。失礼ながら、てっきり英語だけかと」

     アレオパギタは立ち上がると、書斎のドアがきっちり閉まっているか確かめにいきました。それから、自分のカップに紅茶をそそぎながら、顔は上げずに魔女にいいました。

    「カサンドラさん。あなたの名刺には、あなたは政治記者だと書いてありますが、あなたは掃除人だといったんですよ(Your business card says that you are a journalist, but you told me that you were a cleaner.)。 どうもわからないことが多すぎますね。いいですか、わたしは、あなたを責め立てたりしませんよ(I’m not blaming you.)。本のことなんてどうでもいいんです(I don’t care about the book.)。ただね、あたしはこのバーナードを引き連れて、あなたが今まで何をやっていたのか、正直にここで話して欲しいんです」

     魔女は「わかりましたわ(I understand.)」と答えると、斜めがけにしていた重たいバッグを肩からはずしました。そして足を組んですわり直すと、ソファの背もたれに片腕をのせて、ゆっくりと話し始めました。

    ¹ run out of ~ ~を切らす

    ² prefer … to ~ ~より…を好む

    ³ such a ~ そのような~

    ⁴ make an appointment with ~ ~と予約をとる

    ⁵ … as well …もまた


    《日本語訳》

    【A】

    「アエロパギタさん、私カサンドラといいます。今日ここに来たのは、この本をお返しするためなんですが」

    「本?」

    【B】

    (アレオパギタは差し出された本を手にすると、注意深く冊子にまで目を通していました。それから不思議そうに顔を上げて)「どうしてこれを?」(と魔女に聞きました)

    「あのお、私あなたのオフィスで掃除人をしてたんです。ある日、あなたの職務室を掃除してたら、机の上にそれ(本)があるのを見つけました。私こういう類の本にすごく興味があって、ちょっとお借りしちゃったんです」

    「はあ、借りたんですか?」

    「大変申しわけありません。許可なくこんなことするだなんて、私ひどく不躾でした」

    「まあ、いいですよ、わかりました。でも、どうやってここの住所がわかったんです?」

    「秘書の方が私の名刺の裏に書いてくれました。私たち今朝アポイントなしで、あなたのオフィスにいったんです」

    「その名刺、見せて頂けますか?」


    🐤ブンポウの話 

     ここでは「報告文」と呼ばれる間接話法の組み立てをやってみよう。

    ●間接話法 (1)「〇〇は(~に) …といった*」

    例)

    ◎You said (to me) that …

    ◎You told me that …

     ㊟イタリック部分は省略可

    【設定】ここからは、文中の背景を基に考えてみる

     アレオパギタは、魔女から以下二つのことをいわれて混乱している

    1)I am a journalist. (と名刺に書いてある)

    2)I was a cleaner. (と話でいっている)

    ⇒彼はもう一度魔女に確認しようと、報告文をつくる …

    1)Your business card says* that you are a journalist.

     あなたの名刺は、あなたがジャーナリストだといっている

    2)You told me that you were a cleaner.

     あなたは私に、あなたが掃除人だといった

     ㊟*通常報告は過去形だが、上記(1)のような例も

    ポイント

    ・報告内容の人称代名詞が「I」から「you」に変わっている(視点替え)

    ・最初の動詞(say/tell, etc)が過去⇒報告の内容も「過去形」に統一(時制一致)

    但し、報告の時点(現在)で状況が同じ場合、報告内容は「現在形」のままでもよい

    ⇒He said to her that he lives in Canada. ←彼は今もカナダに住んでいるから

    🖊オファーのsome

    ◎Would you like some tea? 

     someは通常疑問文ではanyになるが

    ⇒人に何かを勧めたり頼む時はsomeのままで○