タイムカマド(第1章7話)

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 魔女はある日、玄関先の姿見の前にネコを連れてくると、動かないように両手でその体を固定させました。そして「そのまま、そのまま、そのままで。じっとしながらそのままで」と、わけのわからないことをいい出しました。

 「呪文かな?」とネコが待っていると、その次にやることは、リビングから青い小びんを取ってきて、ネコの頭からシャカシャカと振りかけます。

「すんまへん。オイラ、コーヒーの次にその『シトラスの香り』ってのがね」とネコが逃げようとすると、魔女はネコを押さえ込んで、もう一度鏡の前に引きずってきました。そして、右手の親指と中指をこすり合わせて、パチンと音をたてると、手の中に金色のリボンがあらわれています。

「うわあ、魔法だ! 初めて見た」

 ネコがその巧みな指さばきに目を見はっていると、魔女はリボンをグルグルとネコの首に巻きつけていきました。

「なんすか、これ? なんかかゆいぞ、かゆいマジック?」

 ネコが首を引っかき出したのに、魔女は膝をついてネコの後ろでかがみ込むと、鏡の中で視線を合わせようとネコの目を追いかけてきました。それから、低い声でやたら抑揚をつけてしゃべり出します。

「You have beautiful eyes.¹ The left eye is green and the right one is blue.²」

「はい、顔に二つの目があるんすよ。鼻と口とがあって。だけど、この首のひも、取ってくれませんかね。やたら、かゆくて」

「Your ears are clean and your tail is long. You have splendid whiskers, and strong sharp nails. You are beautiful.」

「わかったっす。I am beautiful cat. I am beautiful cat. やめてくれーい、かゆいマジック!」

 ネコがわめき散らすと、魔女はリボンを引っぱって外しました。ネコが窒息しそうな首をなでなで、発疹が出ていないか足の裏をチェックしてると、魔女は「まったく! それをいうなら、I’m アッ、アッ、アッ」といいながら、カーぺートを手の平で三回たたいています。

 何を思い出したのか、魔女は突然立ち上がってかけ出そうとしました。そしたら、金のリボンに足元を取られて、その場にひっくり返っています。「Yup」と魔女がくちびるから息を吹き出すと、ピィーとやかんの音がして、どうやら台所でお湯が沸いたようでした。

¹ have もっている 1-8参照

² one ここではeyeを指す(複数だとones)


🐤ブンポウの話 

 「形容詞」という種類の単語は、名詞の前に置いてその説明(修飾)をしたり、単独で性質・状態を説明する。文中の表現を拾ってみよう。

●形容詞の使い方(下線部が形容詞)

□You have beautiful eyes.①

 あなたは美しい目をしている

□Your ears are clean and your tail is long.②

 あなたの耳はきれいで、しっぽは長い

□You have splendid whiskers, and strong sharp nails.③

 あなたは、立派なヒゲと強く尖った爪をもっている

□You are beautiful.④

 あなたは、美しい

◎名詞(モノ・人)の前に置いて、名詞を修飾(例文①と③)

◎単独で主語の性質や状態を説明(例文②と④)

🖊「a」から「the」へ

 モノは数えてa/anあるいは-sをつける

⇒最初から特定できるモノ、あるいはすでに話に出てきて特定できるモノとなったならa/anの代わりに「the」をつける

例)

・Tokyo is the capital of Japan. ←日本の首都は一つ、他にない

・I love this garden. The flowers are beautiful. ←前の文から「この庭にある花」と特定

・Where’s the station? ←街にある特定の駅を意味している

文中の表現

□The left eye is green and the right one is blue.

 前の文でネコの目のことをすでに話している(体のパーツはたいてい最初から特定できる)

  ㊟left/green/right/blueはすべて形容詞


Q)どうして魔女は「I’m アッアッアッ」といったのだろう?

A)ネコが「a」を入れ忘れたことを気づかせようとくり返した

⇒I’m a beautiful cat.

Q)魔女は「Yup(うん)」といったけど、本当は何といいたかったのだろう?

A)2-11参照