魔女はある日、玄関先の姿見の前にネコを連れてくると、動かないように両手でその体を固定させました。そして「そのまま、そのまま、そのままで。じっとしながらそのままで」と、わけのわからないことをいい出しました。
「呪文かな?」とネコが待っていると、その次にやることは、リビングから青い小びんを取ってきて、ネコの頭からシャカシャカと振りかけます。
「すんまへん。オイラ、コーヒーの次にその『シトラスの香り』ってのがね」とネコが逃げようとすると、魔女はネコを押さえ込んで、もう一度鏡の前に引きずってきました。そして、右手の親指と中指をこすり合わせて、パチンと音をたてると、手の中に金色のリボンがあらわれています。
「うわあ、魔法だ! 初めて見た」
ネコがその巧みな指さばきに目を見はっていると、魔女はリボンをグルグルとネコの首に巻きつけていきました。
「なんすか、これ? なんかかゆいぞ、かゆいマジック?」
ネコが首を引っかき出したのに、魔女は膝をついてネコの後ろでかがみ込むと、鏡の中で視線を合わせようとネコの目を追いかけてきました。それから、低い声でやたら抑揚をつけてしゃべり出します。
「You have beautiful eyes.¹ The left eye is green and the right one is blue.²」
「はい、顔に二つの目があるんすよ。鼻と口とがあって。だけど、この首のひも、取ってくれませんかね。やたら、かゆくて」
「Your ears are clean and your tail is long. You have splendid whiskers, and strong sharp nails. You are beautiful.」
「わかったっす。I am beautiful cat. I am beautiful cat. やめてくれーい、かゆいマジック!」
ネコがわめき散らすと、魔女はリボンを引っぱって外しました。ネコが窒息しそうな首をなでなで、発疹が出ていないか足の裏をチェックしてると、魔女は「まったく! それをいうなら、I’m アッ、アッ、アッ」といいながら、カーぺートを手の平で三回たたいています。
何を思い出したのか、魔女は突然立ち上がってかけ出そうとしました。そしたら、金のリボンに足元を取られて、その場にひっくり返っています。「Yup」と魔女がくちびるから息を吹き出すと、ピィーとやかんの音がして、どうやら台所でお湯が沸いたようでした。
¹ have もっている 1-8参照
² one ここではeyeを指す(複数だとones)
🐤ブンポウの話
「形容詞」という種類の単語は、名詞の前に置いてその説明(修飾)をしたり、単独で性質・状態を説明する。文中の表現を拾ってみよう。
●形容詞の使い方(下線部が形容詞)
□You have beautiful eyes.①
あなたは美しい目をしている
□Your ears are clean and your tail is long.②
あなたの耳はきれいで、しっぽは長い
□You have splendid whiskers, and strong sharp nails.③
あなたは、立派なヒゲと強く尖った爪をもっている
□You are beautiful.④
あなたは、美しい
◎名詞(モノ・人)の前に置いて、名詞を修飾(例文①と③)
◎単独で主語の性質や状態を説明(例文②と④)
🖊「a」から「the」へ
モノは数えてa/anあるいは-sをつける
⇒最初から特定できるモノ、あるいはすでに話に出てきて特定できるモノとなったならa/anの代わりに「the」をつける
例)
・Tokyo is the capital of Japan. ←日本の首都は一つ、他にない
・I love this garden. The flowers are beautiful. ←前の文から「この庭にある花」と特定
・Where’s the station? ←街にある特定の駅を意味している
文中の表現
□The left eye is green and the right one is blue.
前の文でネコの目のことをすでに話している(体のパーツはたいてい最初から特定できる)
㊟left/green/right/blueはすべて形容詞
Q)どうして魔女は「I’m アッアッアッ」といったのだろう?
A)ネコが「a」を入れ忘れたことを気づかせようとくり返した
⇒I’m a beautiful cat.
Q)魔女は「Yup(うん)」といったけど、本当は何といいたかったのだろう?
A)2-11参照