タイムカマド(第1章6話)

Written by

in

 暑い日が続くようになりました。

 魔女は昼間出かける時は、すべての窓がちゃんと閉まっているか点検してからいくのですが、さすがに外出から戻ると、家の蒸し暑さに耐えられずに、次から次へとすごいスピードで窓を開けていくようになりました。

「ひょっとすると、この家は外より暑いね」

「そうっすよ。だから最初っから窓なんて開けっ放しでいいじゃないすか。オイラ、ちゃんと留守番してるし。This summer is hot.なんすよ」

 魔女はあきれてネコを見ると、「それをいうなら、It is so hot this summer.¹だろ?」といい直します。「お前、itは前にいったことを受ける代名詞だけど、天候とかをいうなら、逆にitからいい出していいって教えたじゃないか」

「そうすっか? とにかくThis summer is hot. This house is hot.」

「ふーん、お前にいってあったっけ? There is an attic in this house.」

「ゼアリ?」

 魔女は、台所でコーヒーに大量に氷を投げ込むと、グラスをもったままネコを二階に連れていきました。踊り場の奥にもう一つ螺旋階段があって、それを上ると天井の低い小部屋があるのです。窓もいくつかついていて「There are some windows in this attic.」といいながら、魔女は二つの窓を開けていきました。

 横でネコが突然泣き出しています。

「どうしたんだい? アッ、あたしのコーヒーの匂いかい?」

「それもあるんすけど、オイラ、もうダメっす。英語がもうダメなんす」

「そんなことないよ。お前、よくやってるし …」

「でも、オイラ懸命に覚えてきました。this, these, that, those, it, theyってね。小さい言葉っすよ。アリみたいに短い。それなのに、何ですそのゼアリっての? もうこれ以上はムリっす。ムリってもんなんす」

 チラリとネコが横を見ると、魔女は下を向いて笑いをこらえているようでした。それから窓わくに腰かけて、満天の夜空を仰いでいるではないですか。

「ねえ、オイラ、どうして英語やるんすかね?」

「それはねえ …。それは魚だから」

「?」

 魔女は、コーヒーの残りを一気に口に流し込むと、氷のかけらを歯でポリポリとかみ砕きながらいいました。

「わかったよ。これからお前、この部屋を使っていいからさ。This is your attic. This attic is yours. だけど、この窓から落っこちないようにするんだよ」

 窓からの風が、ネコの涙を一気に乾かしてしまいました。

¹ so とても


🐤ブンポウの話

 be動詞に慣れたところで、ここでは少し違った構造をとるbe動詞の構文をひとつ紹介するよ。それが「~がある」という意味を表す「There is/are ~」だ。

 thereという単語は、本来「He is there. (彼はそこにいる)」などと使われるが、この構文はその単語を一番前に出した特殊なもの。覚えるしかない。

●「There is ~」と「There are (some)~」

文中の表現

□There is an attic in this house. この家には屋根裏部屋がある

□There are some windows in this attic. この屋根裏部屋には、(いくつかの)窓がある

◎単数のときThere is ~, 複数のときThere are (some) ~

◎疑問文と否定文では、someはanyになる

・Are there any windows in this attic?

・There’re not any windows in this attic.

👉「There are ~」と「They are ~」の発音の違いを意識しよう