駅に着くとプラットフォームには、すでに黒塗りにRCと金文字で書かれた長い車両が出発を待っていました。人の姿はあまりないのですが、ホームの先の方で乗り込んでいる客がいるのか、列車の扉を閉める音がバタンバタンと構内に響きます。
天井からつる下がった掲示板の時計を見ると、出発まであと十五分はありました。魔女は列車を指さし、近くにいる駅員にたずねました。
「Does this train go to Pit Castle?」
「Yes, Madam.」
「How long does it take from here to Castle station?」
「It takes exactly forty minutes.」
「How far is it from the station to Pit Castle? Half a mile?」
「No, I think it is about a mile.」
駅員は答えてから、ネコに気がつくと「どうぞこちらへ(This way, please.)」といって、一等車まで案内してくれました。
「ふん、二等車の切符を持ってるだけなのに、お前といると調子いいね」と、魔女はラテン語でつぶやきながら、ついていきます。駅員がコンパートメントから出ていくと、魔女は首だけ出して右に左に通路を確かめてから、ドアをカッチリ閉めました。そして、バスケットを肩から下ろすと、素早く窓際の席をとってドスンとすわり、バンザイしたまま足を伸ばします。
「実をいうと、列車の旅は今までやったことがないんだ。いつもホーキで夜中にひとっ飛びのルートだから、なんか迷っちゃって。だけど、これはいいね(By the way, this is really good.¹)。車室も広いし、座席も快適だ(The compartment is huge and the seats are really comfortable.」
ネコもとなりで伸びをしながら「ほいで、城に着いたら何食べるんすか。たいてい腕のいいシェフがそろってるんすよね」と、魔女に聞きました。
「お前、冗談も休み休みおいいよ(Are you kidding me?)。食い物より、いよいよ本業の始まりだ(Stop thinking about food. It’s time for our main job.²)」
魔女はネコの耳を両手で包み込むと、くすぐったくなるまで息を吹きかけ説明しました。
なんでも魔女によると、毎月13日は城で定例会議が開かれる日なんだそうです。それは王族といっても王の近親者だけで催され、そこで決まったことは、ほぼ本決まりというぐらいの内密で重要な会議らしいのです。
「ということは、その会議にオイラも出席するんすか?」
「ああ、でもこっそりとだから、偵察っていった方がいいね」
「偵察? 物騒っすね」
「うん。物騒だけど、何かわかるかもしれないし。実はね、あたしはお父上の失踪には、絶対親族が関わってるんじゃないかと思ってるんだ」
「ということは、オジのピピンだとか(You mean my uncle, Pippin?)」
「そうさ(That’s right.)。ピピンなんて、あたしが一番に疑ってるヤツだ。お父上が失踪してから月初めのバルコニーのスピーチは、ヤツが代行するようになってはいる。臭いのは、あいつが思った以上にやる気になってるとこなんだよね」
「はあ、じゃあピピンは英語ができるんすね(Well, then Pippin knows English?)」
「とんでもない(No way!)。そんなのからきしダメさ(He is bad at English.³)。おまけにヤツにはユーモアもウィットもない(He also has no sense of humour or wit.⁴)。おかげで民衆はだんだん王族に失望して、そっぽ向いてきてる(His subjects are gradually losing faith in him.)。それなのに …」
「それなのに?」
「これを聞いたらがっかりするかもしれないけど、ピピンはロージーと結婚するらしい」
「ええっ? オイラのロージーとっすか?」
「うん、まあ、もともとお前たちは性格が合わなかったのもあるから、もうどうでもいいだろ? それにロージーはあのバルコニーの後、お前との結婚の書面はバッテンして破り捨てちゃったし」
魔女の話に警告を鳴らすように、出発を告げる笛の音がピイーとあたりに鳴り響きました。すべるように列車が動き出して、お城に向かって引っぱられるように速度を上げていきました。
¹ By the way ところで
² for ~ ~のための
³ be bad/good at ~ ~が不得手で/得意で
⁴ also ~ ~もまた
noを入れた否定(have/There~の文で多い)
or または
🐤ブンポウの話
【文中の表現】
□Does this train go to Pit Castle?
この列車はピット城へいきますか?
□How long does it take from here to Castle station? ㊟動詞はtake
ここからピット城へはどのくらい(時間が)かかりますか?
□It takes exactly forty minutes.
ちょうど40分かかります
□How far is it from the station to Pit Castle? Half a mile?
駅からピット城へはどのくらいの距離ですか? 半マイルですか?
□No, I think it is about a mile.*
いいえ、約1マイルあります
*about ~ 約~
●疑問詞 (2)
◎Howのいろいろな表現を押さえておこう
・How long ~?(時間・期間)・How far ~?(距離)
・How big ~?(大きさ)・How large ~?(広さ)
・How much ~?(量・値段)・How many ~?(数える数量)
・How old ~?(年齢)
・How often ~(頻度)


