「あたしは今日つくづく感じたね、『三大カマド』の中でもこの『過去カマド』ときたら、あたしの祖先の一番の失敗作だ(I really felt that out of the three cauldrons, the “Past Cauldron” was the worst of our ancestors’ creations.)」と、魔女は青塗りのタクシーの中で不服そうにいいました。
「だいたい『過去形』でいったい何が聞けるってんだい(What sort of questions can you ask in the past tense?)。いわれたことだって、すべてもう終わったことだし、不規則動詞の暗記で多大な時間を費やしてる割には、役立たずのセンテンスっきり思い浮かばない。まったく、これじゃあ、先が思いやられる(The future looks bleak.)」
魔女が夢中で話しているのに、ネコはさっきから黙り込んでいました。
「ちょっと、お前? 窒息かい(Hey, are you suffocating?)」と魔女がバッグのファスナーを引っぱると、「すんまへん、聞いてなかったっす(Sorry, I wasn’t listening.)。ミリーっす(I was thinking of Milly.)」とネコがか細くつぶやきます。
「ミリー?」
「そう。 さっきアレオパギタの秘書みたいな女性が出てきたっすよね、ロビーに? あれが、ミリー」
ネコは「現在カマド」の旅のとき、列車の中で起こったことをすべて魔女に話してみました。魔女は最初感心しながら聞いていましたが、途中から何か思い当たることがあるのか、じっと車の天井を見上げています。
「あたしもそのミリーって子、前に見たことあるな」
「えっ、じゃあ、あのとき列車で寝たふりしながら、オイラたちの英会話、聞いてたんすか?」
「バカいうんじゃないよ(Don’t be silly!)」と魔女は笑いながらも、目は真剣になっています。
「ほら、あたしがこの本をちょっと借りてきちゃったのは、掃除人のふりして官庁ビルを偵察してた時だっていったろ? そこであたしは最初あのミリーって子に気がついたのさ(I first noticed Milly there.)。あの子は本をもってウロウロしてた(She was wondering around with the book in her hand.)。あやしいと思ったから、職務室までつけていった(I thought it fishy so I followed her to the private office.)。そしたら、あの子は本を机に置いて、本が曲がってないか位置まで直したりしててさ(She was putting the book down on the desk and even adjusting the position of it there.)。だから、あたしはよっぽどそれが大切な本なんだろうと、余計気になっちゃったってわけ(So I thought it must be a very important book and became more curious about it.)」
「ふーん。ミリーも勝手にその本を借りちゃってて、それで返しにきたんすかね(Hmm, isn’t it possible that Milly borrowed the book without permission and came to return it?¹)」
「それもありえる(That’s possible.)。とにかくこの本、早く持ち主に返してすっきりしたくなってきたよ(I’m eager to return this book to the owner as soon as possible and clear my conscience.²)」
タクシーは、アエロパギタ氏の住所とされる「西区メロディー通り4番地」に到着しました。ところが呼び鈴を鳴らしても、ノッカーでドアをたたいても誰も出てきません。魔女はバッグからネコを下ろして、木のスプーンを取り出すと赤い目盛りを確認しました。
「仕方ない、空いた時間にホテル探しをするとしよう。このカマドには、明日の早朝ぐらいまでいられるからね(We can stay in this “Past Cauldron” till early next morning.³)。捜索の合間に休める本拠地をつくらないと(We need to set up a temporary base to use between investigations.⁴)」
魔女が歩き出したのでネコもついていくと、通りの向こうで「おーい」とやけに背の高い男がこちらに両手を振ってきました。男は魔女とネコが立ち止まったのを見ると、全速力で走ってきます。そして、スライドしながら地面になだれ込むと、もっていたビニール袋を地面に置いてバーナードにしっかと抱きつきました。
「バーニー? 信じられない、バーニーだろ(I can’t believe it! You’re Bernie, aren’t you?)」
「オイラのこと、知ってるんすか(Do you know me?)」
「何いってんのさ(What are you talking about?)。オレだよ、オレ。 ハンフリー(It’s me! I’m Humphrey.)」
「ハンフリー(Humphrey?)。ハンフリー・アレオパギタ(Humphrey Areopagita?)」
男はうなずくと、肩まである髪をかきあげながらスックと立ち上がりました。そして、魔女とネコをうれしそうにもっと空の近くから、かわるがわる見下ろしていました。
¹ without ~ ~ なしで
² as soon as possible できるだけ早く
³ till ~ ~まで
⁴ between ~ ~の間 ⇒between A and B
🐤ブンポウの話
●過去形
1)be動詞の過去形
◎am/is→was are→were
◎疑問文⇒前に出す
◎否定文⇒wasn’t/weren’t
2)一般動詞の過去形
◎動詞に-ed、または不規則変化 (㊟-edのつけ方例外あり)
◎疑問文⇒Did …?
◎否定文⇒didn’t …
👉不規則動詞は過去形だけでなく「過去分詞」もここで覚えてしまおう!
🖊動詞thinkの使い方
1) think+(that)文
・I thought it must be a very important book.
2) think+目的語+補語(SVOC)
・I thought it fishy.
3)think ofの後は名詞(or ~ing)
・I was thinking of Milly. 私はミリーのことを考えていた
㊟think about ~ ~を(じっくり)考える
👉1)の形はthat以下の「文」の部分が、塊としてO(目的格)になっている
thinkの他にもこの構造をとる動詞はたくさんある
⇒know/believe/suppose/realise/expect …

